《TABOO②》フォトグラフ
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日曜の昼下がり。
私は彼氏と図書館に来ていた。
お互い本好きなので、たまにこういう休日を過ごす。
めいめい好きな本を選び、肘掛け椅子にゆったり腰かけて本を読む。
至福のときだ。
しかもここの図書館の椅子は、座り心地がいい。
雑誌コーナーを見ていた時、ある女性雑誌の前で立ち止まってしまった。
表紙を飾っていたのは、先日の同窓会で再会した、元カレのリョータだったからだ。
雑誌の中のリョータは、素肌の上に白いシャツを羽織っていて、鍛えられた胸筋や腹筋が露わになっている。
思わずごくりと唾を飲み込んでしまった。
実は同窓会の後、私とリョータは2次会へ向かう輪からこっそり抜け出し、激しく求め合ってしまったのだ。
つい先日、この鍛えられた体に抱かれたばかりだった。
私はその雑誌を手に取り、巻頭カラーのリョータの特集ページを開けた。
そこにはさまざまなポーズを決めるリョータがいた。
鋭い視線を向けるリョータ。
くしゃりと子犬のような笑顔を向けるリョータ。
あの夜、私に見せた切なげな表情はそこにはなかったが、それでもこれらのショットはリョータに抱かれたあの日の晩の記憶を蘇らせるには十分だった。
体の芯が熱を帯びる。
疼いてしまう。
「なに読んでるの?」
突然発せられた彼の言葉に、心臓が一気に縮こまった。
いつの間にか隣りに立っていた彼の視線は、リョータに向けられている。
「あ、う、うん。リョータ、格好いいなって思って」
「うん。確かに男前だな」
それだけ言うと、彼は現代文学の棚の方へ歩いていった。
心臓が止まるかと思った。
客観的には、ただ女性雑誌を眺めていただけだけど。
頭の中は完全に、淫らなあの夜のことでいっぱいだった。
急に雑誌を閉じるのはなんだか不自然な気がして、再びリョータのページに視線を戻すと、カレの鋭い視線のショットとともに、恋愛感について綴られていた。
『俺って間違いなく肉食系だし。それに、好きな人に彼氏がいることが、その恋を諦める理由にはならないよ』
静かな図書館で、私の鼓動は激しく音を立てていた。
fin