蝉の音
はかない命
友達が静かに蝉に近づいた。

僕は目を丸くして友達を見た。

『ほら、つかまえたよ。虫とりあみで捕まえようとしなくても、僕は手で蝉をつかまえられるんだ。』

僕の中で彼がヒーローになった瞬間だった。

僕は友達に聞いた。

『どうやったら、蝉をつかまえられるの?』

『僕のお父さんは蝉とりの名人なんだ、僕はお父さんに教わったんだよ。』

僕は友達のお父さんを思い出した。友達のお父さんは去年の夏亡くなってた。

僕は友達にお父さんのことを思い出させてしまったことを後悔した。

黙ってしまった僕に気付いた友達が笑いながら蝉を離した。

『蝉は、土の中で何年も暮らして、いよいよ外に出れても、1〜2週間しか生きられないんだって、だからこの蝉を捕まえてもすぐに、離してあげよう。せっかく太陽を見れたんだから、虫かごに入れたらダメだよ。』

僕は虫かごを見つめた。

中には一生懸命捕まえた蝉が1匹入っていた。
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