身勝手な彼女と、都合のいい俺(短編)
葛城サキ、29歳。
優秀な仕事ぶりから、女性としては異例の出世を遂げた企画部の主任。

そんな、外見のみならず内面まで優れた彼女は、俺の直属の上司で。

そんな彼女はいつも、俺の予定などお構いなしに現れる。

「あー、おいし」

サキさんは当然のように俺の部屋に上がり込むと、何のためらいもなくビールを開けた。

その小気味いい飲みっぷりに。
それ、俺のなんだけど。
なんてけちくさいセリフは、胸の奥にしまっておく。

「サキさん、もうメシ食いました?
簡単なもので良かったら、一緒に…」

そう言いながら、鍋を火にかけたとき。

「そんなこといいから」

スッ、と。
俺の肩に細い腕が巻き付いた。
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