黄金時間が過ぎるまで
「へーそんな事が、あったんだ…なるほど」

千歳が見つからないように、そっと階段を上がって行くと、男子生徒がこちらに背を向けて、予備用に積まれた机の上に座っていた。

その男子生徒は、反対側に積まれた机の方を向いて誰かと話していた…が、彼の他に人は見当たらない。

変だなと思いつつ、もう一度その生徒を良く見ると、同じクラスの鳴海静時ではないか…

彼は少し、妙なウワサを持っている人物だった。

…あのウワサは本当だったって事かな…           

心の中で呟くと、我知らず体が緊張しはじめていた…

″…鳴海静時は、人けのない教室で誰かと話している…″

霊能者か、はたまた精神病者か…外見からは想像がつかない。

ごく普通の高校生で、いつもボンヤリとしている…あまり目立たない人物だった。

なおも千歳の存在に気付かぬ様子で、鳴海は一人で話しをしている…

…独り言じゃない…確かに会話をしている…         

″み、見なかった事にしよう…″

心の中でそう決めると、千歳は音を立てないように、足をそろりと下の階へと伸ばした。
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