黄金時間が過ぎるまで
「面白そう、私も前から出たいと思っていたのよね…」

「じゃ、協力しませんか?」

「そりゃ、もちろん。わー、本当に出れたらいいねー」

「…じゃ、明日の放課後、またここで…」

「分かった」

下校を告げるチャイムが鳴った。

「そろそろ、戸じまりの先生が回る頃だな…」

鳴海は独り言を言った。    

「帰らないの?」

「うん、ちょっと話の途中だったから」

「あ、そうなんだ。じゃ、お先に」

千歳はそう言うと、トントンと階段を下りて行った。

玄関に来ると、雨がしとしと降っている様子が見えた。

傘を開きながら…千歳は何気なく聞き流した、鳴海の最後のセリフを思い出した。

「…いったい誰とよ?!?」

静かな校内に、千歳の声が木霊した…

その声は、最上階の踊り場にいる鳴海の耳にも届いた。

「もちろん私とよね?お兄ちゃん」

「ねぇ」

鳴海は見えない誰かに向かって、笑いかけた。
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