黄金時間が過ぎるまで
「何で、ウチの先生と須和先生が戻って来てるの〜?!」

「たぶん、職員会議の準備だと思う…」

「…それはいいけど鳴海君、こーゆー時は少しぐらい、あわてた顔してよね…」

「え?充分あわててるのに…もしかして伝わらない?」

「うん…」

「困ったな」

そう言うと、鳴海はのんきに腕を組んだ。                
体育館からここまでの通路は、だだっ広い廊下で、どうやっても二人の教師に見つかってしまう…

長い廊下の端に、今二人を見たから、そろそろ職員室に着く頃だ。

人の話し声が近づいて来る…

鳴海は一息はくと、くるりと向きを変え、千歳の腕をつかむと、ある方向へ向かった。

「へ?どこに行くの?」

「印刷室…あそこしか隠れる場所ないでしょ?急ごう」

二人は静かに、でも急いで印刷室へと入ると、鳴海が後ろ手に扉を閉めた。

初めて入る印刷室は左手に流し台があり、書類棚が壁を埋めていた。

中央に大きな作業机と、その上に印刷機が二台のっており、テーブルにはビニールクロスが敷かれ、机の下に紐でくくられたプリントが見えた。

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