黄金時間が過ぎるまで

第九話 〜夏は夜〜

いつもの事ながら、夏は大変苦手だ…何だってこんなに暑いのだろう…生き物が生き生きしていて、何か″わーーー″っという気になる。

頭が限りなく本能に近くなる…思考は無意味だ…ああ溶ける…

そんな事をクーラーの効いた涼しい図書室で、千歳さつきは考えていた。

今日は終業式で、明日から夏休みだ…

千歳は本の貸し出しをするために、図書室にこもっていた。

あまり生徒の姿はなく、静かだった。



「…千歳」

突然、頭の上から声がかけられた。どうやら、いつの間にか眠っていたらしい。

千歳はうつぶせのまま、首だけ横に向けると声の主を見た。

「…なるみ…まだいたんだ…」

「うん…ところで千歳、この後ヒマ?」

「へ…?」

千歳が腕時計に目をやると、6時半を指していた。

夏は日が長い…まだ西日が明るいので、もうそんなに時間が経っている事に気づかなかった。

「うわっ、もうこんな時間?!…寝過ぎた…あ、ところで何だっけ?」

やっと現状を把握すると、千歳は起き上がった。

「これからいい所に行くんだけど…千歳もどう?」

うっすらと笑みを浮かべて、鳴海が言った…
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