黄金時間が過ぎるまで
鳴海は試すように、担任の反応をうかがった。

「うん、そうだね、つらいね。鳴海の場合、後がいないからね」

「え?」

水原が何の事を言っているのか分からず、聞き返した。

「…鳴海の兄キは見つけちゃったからね〜、そのせいで、お前さんが跡を継ぐ事になっちゃったんでしょうよ」

水原は頬杖をつくと、しれっと悪びれもせずに続けた。

「オレ、今年で十年ここにいるんだよ?知らない訳ないでしょうに」

やられた…と鳴海は思った。こんな所に兄を知る人物がいようとは…

「…なんだ…先生は、はじめから分かっていたんですね…人が悪い…」

「おーよ、三年の時、担任だったからね…お前さんとこの事情は、つつ抜けよ」

水原は、からからと笑って足を組み直した。

「兄ちゃん、元気に仕事がんばってるか?」

「ええ、役も人気も付いてきてるみたいです…この間公演を見て来ました」

「そっかそっか良かったよー、お前さんの兄ちゃん、どこか危なげなヤツだったからね」

水原は安心したように笑った…
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