黄金時間が過ぎるまで
「あーあ、もうお兄ちゃんとお話できないんなら、ここにいてもしょうがないなー、帰ろっかな…」

「…さえちゃん元気でね、って言うのも変だけど…」

鳴海はクスッと笑って続けた。

「さえちゃんに会えて楽しかったよ、ありがとね」

鳴海はしゃがむと、さえと目線を合わせた。

さえは鳴海をじっと見ながら、泣き出しそうな顔をしている…

手を伸ばして鳴海に抱き着こうとしたが、通り抜けてしまう…

″仕方ないな…″

残念そうに自分の手を見ているさえの姿に、鳴海は苦笑した。

「あ、そうだ!」

さえが勢い良く叫んだ。かと思うと大急ぎで走り出し、出口の扉へと消えていなくなってしまった。

「さえちゃん…?」

″もしかして…今ので、お別れかな…?″

一人、屋上に残された鳴海の上を、音もなく風が通り過ぎて行った。
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