黄金時間が過ぎるまで
その頃、千歳は教室にいた。

鳴海に挨拶をしてから帰ろうと思って、探しているところだった。

「いないなぁ…保健室にもいなかったし…残るはあそこかな…」

すでに帰った…という気はしなかった。

確信を持って教室を出ると、そこに向かう…

その途中、長い廊下の向こう側から、誰かが来るのに気づいた。

良く見ると、それは小さな女の子で…雪村さえではないか…

千歳の前世の残留思念だよ、と鳴海が教えてくれた…

「…さえ、ちゃん…?」

千歳は立ち止まると、ただただ彼女を見つめた。       
さえの方は、ものすごいスピードで千歳に近いて来る…

すぐそばまで来ると、さえは千歳に微笑みながら、こう言った。

「ただいま!!」

呆気に取られている千歳の体に、さえは勢い良く飛び込んだ。

″ドン″と衝撃のような電気のようなものが体に走り、金縛りにあったみたいに動けなくなってしまった。
< 74 / 81 >

この作品をシェア

pagetop