私はしがない執事です
「どうしてお一人しか…?」
聞いて良いことなのか悪いことなのか分からないが、気になったら聞く。
それが私のモットーだ。
そのせいでどれだけ家事を完璧にしてもお屋敷を盥回しにされてきた。……苦い思い出だ。
「理由は二つです」
長い指をスッと伸ばす。
お兄さん、片手運転ですか。
「一つ目はお嬢様がお気に召さない。
二つ目は私が気に入らない」
いや、待て。待てよ。
ちょっと待て。
「“貴方”が気に入らないという理由で辞めさせるのですか?」
普通は旦那様とかでしょうが。どんな執事様だよ。