私はしがない執事です


「何があったか知りませんけど、雅ちゃんを泣かすような事はしないで下さいね」




私がそう言うと新城さんは少し驚いた顔をした後、黙って微笑むだけだった。


そうして何も話す事がなく、する事もなく、沈黙が続いた。


それを破ったのは新城さんだった。




「――私と、椿様が不仲の訳を聞かないんですか?」




あぁ、そんな事か。




「聞きませんよ。聞いてもはぐらかされるの目に見えてますし。気にならないと言えば嘘になりますが…そこまで首を突っ込んで良いとは思いませんから」




私は所詮数週間前に配属されたメイド。
そんな私が何もかも首を突っ込むのは間違ってる。


いくら私が直接屋でも、言って良いことと悪いことの区別ぐらいはわきまえているつもりだ。




「……そうですか」




そうして答えた彼は、またも無言に戻るのだった。
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