私はしがない執事です
「あぁ、瑠璃。アレは放っておいても大丈夫じゃ。時に何度かそういう現象が起こるのじゃ。
アイツ…礼儀は良いが食事のマナーだけは悪いんだ」
いや、でも…アレは絶対おかしい。
だって椿君…
「涙目だよ?」
「美味しすぎて感動したんだろう」
いやいや五十嵐財閥って言えば皆、恐れおののく世界でも名高い財閥だ。
そんな所の御子息様が新城さんの料理に感動しすぎるだなんて考えられない。
「妾と椿では味付けが違うからの。椿はどうやら辛めが好きらしい。いつも涙を流しながら食べておるからの。妾はあまり好かないが…味見すると美味かったぞ」
ちょっと待て。
雅ちゃんが“美味かった”…?
それってつまり…
「椿君、行儀が悪いのは分かりますが、ちょっとこちらのスープ味見させて下さいね」
むせている椿君に断って、私はレンゲですくいあげ、見るからに赤い色をしたスープを飲む。
因みに私のは透明のコンソメスープだった。