Loveless
「立てる?」


と言って私は屈んで男の腕を支えた。


男はううっと呻き声を上げて、辛そうに立ち上がった。


漆黒の髪に黒いスーツ。


だいぶ殴られたのか顔は腫れ上がり、口からは血を流していた。


これでは長い距離を歩くことは出来ないだろう。


私はよろよろする男を支えながら大通りでタクシーを捕まえた。


運転手はボロボロの男を見るなり、


「シート汚さないで下さいね」


と言った。


こうして私と男は私の住むアパートへ向かった。
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