ありがとう。言えるかな
『……』

沈黙が少し続いて医者がやっと口を開いた

『では正直にすべてを言います。旦那さんは…癌〔がん〕です……手術でとれなかった腫瘍が肺に転移してます、もう手術では……』

『助からないって事です……か?』

『後一年保つかどうか』

『……………』

言葉は出ない頭の中は真っ白、涙すらでないし声を発する事もできない。

『絶対あの人には言わないでください。いつか私の口から言いますので』

『わかりました。辛いでしょうが今は奧さんが頑張らなきゃいけないんですよ』

『はい』

やるしかない頑張るしかない例え助からないかもしれなくても、常に笑っていてほしい幸せでいてほしい、そう思い母さんは腹を括ったのだ。

母さんは一人父さんの寝てる病室に向った

『泣かない泣かないしっかりしないと』

そう呟きながら歩いていた

『嫌よあの人がいなくなるなんて・・嘘よ信じられない。無理よ泣かないなだって…助けて助けて神様。私は何をすればあの人は笑っていられるの?教えてください』

母さんは誰にも言えないで一人潰れそうになりながら、涙を流した。

あれだけ元気だった父さんが急に癌になり後一年の命
< 57 / 184 >

この作品をシェア

pagetop