ありがとう。言えるかな
それを宣告され残される人、愛し続けると誓ったのにいなくなってしまう恐怖、想像がつかない。

それでも母さんはこの日から誰よりも強く生きた、誰よりも悲しいはずなのに。

そーっと病室を覗くと父さんは麻酔が切れて外を眺めていた

『私があの人を支え続ける。あなたを愛してるから』

そう自分の心に強く決心した

『あら起きてたの?』

『あー』

『あらどうしたの?

『いや何でもないよ!お母さん大丈夫か?疲れてないか?』

『何言ってんのよ私は疲れ知らずよ、あなたが一番知ってるでしょ』

『ありがとな、サナエ……』

『何よ気持ち悪いわよいきなり名前で呼ぶと』

『そうか?たしかにいつぶりだろーな名前で話すの』

二人はなんか楽しそうに懐かしく結婚する前の事を話していた。まるで付き合いたての恋人同士みたいに笑いながら話ていた。

それから父さんは癌治療でとてつもなく辛い闘病生活を送る事になる

そしてそれから俺も母さんによく誘われるようになり、お見舞いに行く様になった

『隆今日も行くわよ』

『でもなんで最近良く連れてってくれるの?』

『だってお父さんに会いたいでしょ』

『そうだね』
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