タイムカプセル
「二人だけの時間貰えない?」
小さく頷くと、後に続く。
そして校舎の影、そっと手を握った。
お願いします。
今日だけ……今日だけでいいから、恋を諦めてた15歳の私に戻らせて。
「もっと早く気付けばよかった」
「あの頃の誠也、みんなの憧れだったんだから言える訳無いでしょ?」
すぼめた口に柔らかい誠也の唇。
「何言ってんだよ、俺がどれだけ朱里の事好きだったと思ってる訳?」
互いに知らなかった想いが溢れだしてもう止まらない。
息が自然と荒くなる。
「もう遅いよ……」
「今は今だ!」
逃れられない。私に触れる唇に、指に、手に、従った。
あの頃の切ない片思いが、一気に両想いの気持ちになって溶けて行った。
【END】