桜のジンクス 《TABOO》
演奏を終えた後、校舎の中を懐かしげに歩く私の足が最後に向いたのは桜の木。
近づくにつれ、鼓動が早鐘を打つ。
偶然?
桜の木の下に男が立っている。
懐かしい背中だった。
「あのあいあい傘、まだ残ってんだぜ。」
振り向き様に微笑む彼が言う。
「え?そんな事した?」
敢えてとぼけてみせた。
「何だよ、忘れちゃったのかよ。」
「ん?あ~、そう言えば…なんか約束したよね?」
「約束?……したかなぁ?」
と頭を掻いている。
――嘘…照れてるだけでしょ
見かねた私は黙って目を閉じてあげた。
そっと重なる彼の唇。
その瞬間、あの日の約束が色鮮やかに私を埋め尽くした。
《あいあい傘がある限り、二人はずっと恋人同士だ》
私には今、彼がいるのに…。
これ…ジンクス?…
どうしよう…
この唇を離したくない…
END