心の鍵
鍵
今日は、そんな凄腕イケメン君の歓迎会。
特に気合いを入れるでもなく向かった会場には、着飾った雌豹達がお互いを牽制しあっている姿があった。
獲物は勿論…。
あちらこちらにビールを注いでまわるイケメン君は、どこのテーブルに行っても歓迎されていた。
人当たりも良くて言葉選びも慎重で気遣いもできる、本当に良くできた若者だ。
女子社員達のお誘いも、上手くかわして断っているみたい。
「…っ!」
無意識にイケメン君を目で追っていたことに気がついて、私は急に恥ずかしくなってしまった。
飲んで食べて、元取ろう。気を取り直し目の前のお皿に手を伸ばす。
「美味しい。」
ちょっと笑顔が戻った。
ーーー。
宴もそろそろ終盤に差し掛かった頃、逃げ延びた獲物君がよろよろと私の隣にやって来た。
「たくさん飲んだ?」
「はい。もう飲めません。」
屈託なく彼は、笑う。
「でも、食べれますよ。」
「うわぁ若いね。まだ食べる?」
「はい。胃に入るモノ以外なら。」
彼の意味不明な言葉に私が呆れた笑いを返すと、彼はスっと真顔に戻り瞳を細めた。
「すみません。お願いがあります。」
これは彼が仕事を頼む時の、いつもの言葉。
でも…。
ふいに耳元で囁かれた言葉に息が止まった。
「仕事意外の話がしたいんです。
今晩俺に、口説かれてくれませんか?」
「!?」
「正直に言います。
食べたいんですよ、あなたを。」
「飲み過ぎ…」
「頑張って飲みました。
酔わなきゃ言えません、こんなこと。
ずっと、あなただけを見てたのに。
いい加減気づいて下さい。」
「……。」
私が無意識に掛けていた禁断の扉の鍵が、今、音をたてて外れた気がした。
特に気合いを入れるでもなく向かった会場には、着飾った雌豹達がお互いを牽制しあっている姿があった。
獲物は勿論…。
あちらこちらにビールを注いでまわるイケメン君は、どこのテーブルに行っても歓迎されていた。
人当たりも良くて言葉選びも慎重で気遣いもできる、本当に良くできた若者だ。
女子社員達のお誘いも、上手くかわして断っているみたい。
「…っ!」
無意識にイケメン君を目で追っていたことに気がついて、私は急に恥ずかしくなってしまった。
飲んで食べて、元取ろう。気を取り直し目の前のお皿に手を伸ばす。
「美味しい。」
ちょっと笑顔が戻った。
ーーー。
宴もそろそろ終盤に差し掛かった頃、逃げ延びた獲物君がよろよろと私の隣にやって来た。
「たくさん飲んだ?」
「はい。もう飲めません。」
屈託なく彼は、笑う。
「でも、食べれますよ。」
「うわぁ若いね。まだ食べる?」
「はい。胃に入るモノ以外なら。」
彼の意味不明な言葉に私が呆れた笑いを返すと、彼はスっと真顔に戻り瞳を細めた。
「すみません。お願いがあります。」
これは彼が仕事を頼む時の、いつもの言葉。
でも…。
ふいに耳元で囁かれた言葉に息が止まった。
「仕事意外の話がしたいんです。
今晩俺に、口説かれてくれませんか?」
「!?」
「正直に言います。
食べたいんですよ、あなたを。」
「飲み過ぎ…」
「頑張って飲みました。
酔わなきゃ言えません、こんなこと。
ずっと、あなただけを見てたのに。
いい加減気づいて下さい。」
「……。」
私が無意識に掛けていた禁断の扉の鍵が、今、音をたてて外れた気がした。