フェイク
翼さんはテーブルの上の紙袋に視線を落とし、小さく溜め息をついた。


「そうですか……」



一瞬

私の為にアクセサリー屋さんへ足を運び、似合うネックレスを一生懸命探してくれている翼さんの姿が、脳裏に浮かんだ。



服装一つ妥協出来ない、意地っ張りで気難しい私なんかの為に――


胸が痛んだけれど、すぐに気を取り直した。


そんな事に胸を痛める資格は、今の私には無い。
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