The Fool
スラリと背が高く、歳の頃は20代。

整った顔立ちは誠実そうにも、不誠実そうにも見える。

まるで光源氏が物語から飛び出してきたようだと、そんな馬鹿げた事を思った。

声を掛けた私にチラリと視線を投げた彼は薄く笑い、手にした本を元に戻して去っていく。

慌てて彼を追ったけれど、既に彼はどこにもいなかった。

戻された本を手に取れば、やっぱりカードは逆。

バッグの中からペンを取り出し、カードの裏にメッセージを残した。

彼が気付くかどうかは、わからない。
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