まほろば【現代編】
再び布団の上に寝転がり、今のハルカとのやり取りに思いを馳せていると、廊下に面した襖の向こうから声が聞こえた。

「リュウ君、ちょっといい?」

綾姉だった。

慌てて起き上がり、顔の表情を引き締める。

「どうぞ」

部屋に入ってきた綾姉は、寝巻き代わりに借りたであろう浴衣姿で湯上り特有の香りに包まれていた。

まだ乾ききっていない長い髪の毛を無造作に後ろで束ている。

束ね切れなかった後れ毛が妙に色っぽい。

「どうしたの?」

ほんのりと上気した頬と節目がちな瞳に女性の色香というものを感じながらも、それに多少の危機感を感じつつ普段どおりの態度を取ることに努めた。

綾姉は、おずおずといった感じで俺の横に寄り添うように座る。

「うん、ちょっとね……」
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