まほろば【現代編】
いつもと少し雰囲気の違う綾姉を極力意識しないように、とりあえずは今後の捜索方針などについてしばらく話し合った。

その作戦が功を奏したのか、ようやく普段どおりの二人に戻れた気がした。

「じゃあ、そういうことで。今日はもう遅いからそろそろ寝たほうがいいよ」

一応お開きのつもりでそう言った言葉に対して、綾姉は全く違うことを口にした。

「ねぇ、リュウ君。さっきまで、ハルカちゃんと電話してたの?」

綾姉の視線は未だ俺の手に握られている携帯電話へと注がれている。

「えっ? あぁ、まぁ」

別に隠すことでもなかったからそう答えたが、次の瞬間には何故か俺の目は天井と綾姉の顔を捉えていた。

「綾姉?」

綾姉に押し倒されるような形になっているが、その力は吹けば飛んでいってしまいそうなほど弱々しい。

振りほどこうと思えばいくらでもそうできたが、悲しそうな顔をした綾姉の表情に俺の胸には小さな棘が刺さったような痛みが走り、動けずにいた。
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