まほろば【現代編】
今度は、より指先に集中して呪を唱えながら順調に九字を切っていった。

「――前!」

最後の呪と同時に手剣を横に切ると今までに感じたことないほどの手ごたえ。

おっ、もしや大成功!? と思いつつ、切った九字の行方を追えば視線の先には人影。

わざわざこんな人気のないところで、しかも絶対に人がいないだろう場所を選んで九字を切っていたはずだけど、その人物はいつの間にかそこにいた。

えっ! ど、どうしよう! 九字って人に当たっても大丈夫なものなのかな? 

あたふたとする私などお構いなしに、まっすぐにその人物へと向かっていく気の塊。

当たる! 

そう思った瞬間、進行方向の人物はまるで虫でも払うかのように軽く手を振ると何もなかったかのようにして一歩前に進み、木漏れ日が漏れる境内へと出てきた。
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