まほろば【現代編】
かなり歩き回っていたせいか、この暑いさなか紗綾の顔は心なしか青ざめている。

休憩がてら、近くにあった小さな公園に入って紗綾をベンチに座らせた。

「ごめんね、リュウ君」

「別に謝ることじゃないよ。紗綾は体が弱いんだから、雅仁さんのところで待っててくれてもいいんだよ」

「嫌!」

思ってた以上に強い拒絶の言葉が返ってきた。

ついで、弱々しい声が続く。

「お願い。一緒にいさせて」

紗綾は紗綾で一生懸命なのだろう。

これ以上紗綾を傷つけたくはない。

だから、東京にいる間は極力出来る範囲で紗綾の願いを聞き入れてあげようと密かに心に誓った。

それが、俺に出来る精一杯の誠意だと勝手にそう思い込んでいた。

しばらく休んだところで、紗綾の調子もだいぶ回復したみたいなので目的の目青不動尊へと向かった。
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