まほろば【現代編】
それは、雅仁さんなりの優しさだというのはわかっている。

だけど、くさくさした気分の今、あまり気乗りのしない提案だった。

「私……行きたい」

遠慮がちな声が前方から聞こえてきた。

声の主に視線を向ければ、上目遣いでこちらを窺う紗綾が目に入る。

気分は確かに乗らないが、紗綾がそれを望むなら俺はそれを叶えてあげるのみだ。

「そうだね。ここの所ちょっと根を詰めすぎていたかもしれない。たまには、息抜きも必要かもね」

俺の言葉に、紗綾は本当に嬉しそうな顔をした。

その顔が見られただけでも、俺の決断は間違いじゃなかったと思った。
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