まほろば【現代編】

ii

祭りは夕方からだったが、その日はそれまで特に何もせず過ごすことにした。

昼を食べてのんびりしていると、雅仁さんが部屋にやってきた。

「飛龍君、ちょっといいかい?」

「どうぞ」

部屋の中に入ってきた雅仁さんの手には、なにやら大判の布が握られている。

「よいしょっと」

徐にその布を広げるとニヤリと笑ってこちらを見た。

「ほらほら、飛龍君。せっかくのお祭りなんだからさ、ね?」

何が「ね?」なのだろう。目の前に広げられた黒地に薄いグレイで縞模様が入っている浴衣をため息をつきながら眺めた。

「あの、せっかくですが――」

「紗綾ちゃんは、もう着替えに入ってるよ。自分で着付けできるみたいだから、飛龍君の着付けは僕が手伝うよ」
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