まほろば【現代編】
「そうね。お祭り終わるまで降らないで欲しいな」

横を向けば、黒地に月下美人を白抜きした浴衣を着た紗綾がいた。

髪の毛は器用にアップにまとめているため、ほっそりとした首すじが露わになっている。

元々大人っぽい紗綾だったが、その姿はいつも以上に艶っぽく大人の色香というものを放っていた。

紗綾は、ほんのり頬を上気させ照れたように「どう?」と言いながらくるりと一回転した。

「うん……綺麗だよ」

「本当?」

「本当」

別に嘘をつくつもりはない。

紗綾は確かに綺麗だった。

俺の言葉に嬉しそうな笑顔を見せながら腕を取ると「そろそろ行こっか」と促した。

ちょうどそこに前から雅仁さんがニコニコしながら歩いてくるのが目に入った。

「いやー、やっぱりいいねー。美男美女で絵になるねー」
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