まほろば【現代編】
しばらく待っても、リュウは私のことをじっと見つめるだけで固まってしまったかのように動かない。

リュウがなかなか口を開かないので、私の中の疑問符はどんどん増えていく。

「どう――」

待ちきれなくなって、何を言おうとしているのか問おうと思ったら、リュウの唇が動いた。

「ハルカのことが、好きだ」

今度は、はっきりとリュウの顔が見えた。からかっているわけでもない。

ふざけているわけでもない。ただひたすら真剣なリュウの瞳に私の心は射抜かれていた。

「私も……。私も、リュウが――好き」

本人目の前にして、こんなに素直に自分の気持ちが言えるなんて思わなかった。

私の言葉に、ニコリと微笑んだリュウの手が私の頬に触れた。

自然と閉じられる私の瞼。

微かに顔を上に向けられたかと思うと、唇に感じる柔らかく暖かい感触。

そっと触れるだけの優しい、私のファーストキス。

その後のことは、はっきり言ってよく覚えていない。

ただ、別れ際に明日の昼ごろ家に来てくれと言われたことだけは妙に頭に焼き付いていた。
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