まほろば【現代編】
頭の中では、ぐるぐるぐるぐると意味もなくどうしようという言葉が回っている。

「遙! いい加減起きなさい!」

いきなりドアが開いたかと思うと、お母さんが顔を覗かせた。

そのお母さんは、ベッドの上で胡坐を組んだまま固まっている私を見て逆に固まってしまった。

「遙、大丈夫?」

「だ、大丈夫、大丈夫」

私の慌てっぷりにお母さんの顔が疑わしげに変わる。

それでも、娘を信じてくれたのか「もうすぐ昼になるわよ」との言葉を残して部屋から出て行ってくれた。

「ん? 昼?」

部屋の中にこもる熱気に、自分が汗びっしょりだということに気が付いた。

「うわっ! ヤバイ、早く行かなきゃ!」

慌てて着替えを持ってバスルームに駆け込むと、ざっとシャワーだけ浴びてご飯も食べずに家を飛び出した。
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