まほろば【現代編】
確かに、この石は不思議な石だと常々思ってはいた。

冷たいはずのものなのに、それはいつもほんのり暖かくて私の心を穏やかにしてくれる。

「でも、過去って言ったってどこに行くの?」

「ボクがいたところ。つまり、前にハルカがアキと出会った時代だよ」

「えっ? アキと……って、あれって過去だったの?」

「そうらしいな。俺もこの間知った。だから、一度行ったことがあるハルカの協力が必要だ」

そんな真剣な眼差しで見つめられたら断ることなんて出来ないよ。

でも、気にかかることが一つ。

「ねぇ、ホムラ。ホムラも見たでしょ? こっちに戻ってくるとき最後に……」

私の心配はわかっているとでも言うように、優しい微笑を作ると「大丈夫」と頷いた。
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