まほろば【現代編】
ただひたすら歩き続ける。どんどんとあの場所に近づいていっている。

三人とも口を開くことなく、足だけを動かしていたせいか予定よりも早く遠足のときの休憩場所まで辿り着いた。

「もう少しだな」

ポツリとリュウが呟いた。視線の先は、木立の向こうを見据えている。

「そうだね」

私も視線をそちらに向けた。

また、あの清らかな気がそちらのほうから流れてきているのが感じられる。

「よし、行くぞ」

リュウの言葉を合図に、再び私たちは歩き出した。

ほどなくして、あのぽっかりと開いた空間に出た。

その中央には、いったい何年生きているのかというくらい立派な木が一本立っている。

何だか泣きそうなくらい懐かしい気分になる。
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