まほろば【現代編】
「蔑みというより、自分たちと違うものに対する畏怖や嫌悪といったものかもしれない。妖はただ防御のために人間に対して攻撃を行うだけだ」

「じゃあ、人間の方が悪かったってこと?」

「さあ、それはどうだろうか? どちらが悪くてどちらが正しいという線引きは難しいかもしれない。ただ、なるようになってしまったといったところが正しいのだろう」

「でも、人間が妖に対して攻撃しなければこんなことにはならなかったんじゃないの?」

「確かにそうかもしれない。だけど、それは長い年月が流れてしまった今となってはどうしようもないことだ」

「そうかもしれないけど……」

納得いかない私にリュウは優しい言葉を投げかけてきた。

「ハルカは、そんなことを心配しなくていい。ただ、見守っていてくれれば、それでいい」

闇が忍び込んできた部屋の中は、真夏だというのに少しひんやりとしている。

リュウの足元では、シロが丸くなって小さな寝息を立てていた。

リュウは変わらず窓を背にして立っているが、何だかいつもより大きく見えた。
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