まほろば【現代編】
言葉を詰まらせる私の頭を軽くポンポンと叩くと「悪いな」とだけ残して部屋を出て行こうとする。

「ちょっと、待ってよリュウ」

慌ててリュウの後を追うが、部屋の中に残されたシロが気にかかり入り口で立ち止まって後ろを振り返ってしまう。

「シロは、そのままでいい。この部屋はシロのための部屋でもあるからな」

少し前を歩いているリュウが歩みを止めることなくそう言った。

そういえば、前にホムラの部屋に行ったときも同じようなことを聞いた気がする。

小走りになりながらリュウの隣に並ぶと、その綺麗な横顔を見上げた。

「どういうこと?」

視線だけチラリとこちらに向けると、少し思案する様子を見せてから口を開いた。

「前に話しただろう。この家は、八角形に出来ている。シロがいる部屋はちょうど真西に当たる部屋だ。白虎が守護する方位は?」

「えっ?」

いきなり話を振られても、とっさに切り替えが出来るほど私の頭の回転は速くない。

自分で言うのもなんだけど。
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