まほろば【現代編】
玄関まで来ると、リュウが珍しいことを聞いてきた。

「ハルカ。送らなくても大丈夫か?」

「えっ? うん、大丈夫だよ。まだ、そんなに遅い時間じゃないし」

「そうか……」

いつもならそんな心配などされること無いのに、今日のリュウは何だかいつもと違う気がする。

「じゃあ、結界の張りなおしが終わったらまた連絡する」

「うん、わかった」

その言葉を最後にリュウに背中を向けた。

しばらく足を進めたところで振り返ってみたら、まだリュウが見送ってくれている。

小さく手を振ると、リュウもそれに応えてくれた。

結界の張りなおしに同席させてもらえないのは、少しというかかなり寂しい気持ちがするけど、リュウのそんな些細な仕草に胸が熱くなる。

単純な私は、それだけで足取りも軽く帰路に着いた。
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