まほろば【現代編】
今までの沈黙を埋めるために、まくし立てるようにそう口を開いた。

だけど、今回の件に関しては、女性陣には手を借りるつもりはなかった。

「ありがとう。でも、もうすべての割り振りは終わってるから、紗綾はただ結界の張りなおしが終わるのを待っててくれればいいよ」

「でも!」

なぜか、紗綾が焦っているようにも見えたが実際のところ他に何かすることなどなかったからこう言うより仕方がない。

「あの、何でもいいの。ちょっとしたことでも」

「なんで?」

「――それは。だって、リュウ君の役に立ちたいから……」

最後のほうは力なく視線も逸らされた。やっぱり、紗綾の様子がおかしい。

何かを隠しているみたいだが、それを誰にも――俺にすら言う気はないみたいだ。

「だったら」

そう言葉を繋げた俺に、紗綾の安堵した顔が向けられたが、それに続く言葉を聞いてガクリと肩が落とされるのがわかった。

「母さんと妹たちを守ってやって」
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