まほろば【現代編】
それだって、十分役に立つことだ。

母さんは、陰陽師としての能力はほとんどないし、妹たちはまだ小さい。

だから、当日は隣町にある分家、つまりは紗綾の実家で待機していてもらう予定だ。

もちろん、そこには紗綾も同席してもらうことになっている。

「……私、ここにいちゃいけない?」

か細い声の主を見れば、声と同じぐらい萎れた様子の紗綾が目に入った。

「なんで?」

再び同じ疑問を問わなくてはならない。

実際、どうして紗綾がそれほどまでに結界の張りなおしに固執するのかがわからなかった。

紗綾の口が再び開きかけまた閉じる。

そして、諦めたように小さく微笑む。

確かに微笑んではいるけど、今にも泣き出しそうなその顔に胸が痛む。

思わず、同席の許可を出そうかと思った矢先、紗綾が先に口を開いた。

「ごめんね、リュウ君。困らせること言って。じゃあ、明後日頑張ってね」

それだけ言うと、まるで逃げるように部屋を飛び出していってしまった。

追いかけようかどうしようか迷いはした。

だけど、結局はこれで良かったのだろうと自分に言い聞かせ、部屋を出て行く瞬間、零れた雫には気づかない振りをした。
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