まほろば【現代編】

ii

そうこうするうちに、ついにこの日が来た。

前日から、女性陣は紗綾の実家へと移動していたので、もとからそれほどうるさくもなかった我が家は、さらにガランとした印象を受ける。

朝の空気を吸い込みながら、すでに眩しい光を放つ空を目を細めながら眺めた。

朝から、夏らしい高く蒼い空は清々しく、昂る気持ちを少しは落ち着かせてくれる。

結界の張りなおしを行うのは、夜も更けてからだが、その前にやることは多々あった。

朝早く起きたのもその一環だ。

神社を囲む鎮守の杜の中に小さな清流がある。

そこに行き、今日の儀式に臨むための禊を行う。

寒い時期ではないから特に苦行でもなんでもないが、それでもやはり禊を行うと身の引き締まり方が変わってくる。

時間をかけて丁寧に身を洗い清め、用意しておいた浄衣を身につけた。

今日一日は水以外のものを口にするつもりはないので、そのまま本殿へと移動した。

うちの神社は、少し特殊な造りとなっている。
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