まほろば【現代編】
ここまで来られれば、もう迷うことはない。

少し歩く速度を緩めながらも、着実に目的の場所を目指した。

視界が拓けると見覚えのある小さな小屋が目に入る。

昨日の傷痕が残ったままの窓の残骸が、小屋の外に散らばっていた。

昨日のことが嫌でも思い出されて、暑いはずなのに何故か身震いをしていた。

開け放たれている扉からそっと中を覗けば、すぐ目の前の框に腰掛けている紗綾さんが目に入った。

「あっ! あの、こんにちは。ごめんなさい。少し遅くなっちゃって……」

思いがけずすぐ近くにいた紗綾さんに動揺を隠し切れずに、あたふたと言い訳めいたことを言ってしまう。

そんな私を見て、紗綾さんは優雅に微笑んだ。

「大丈夫よ。私も今来たところ。それより、暑い中こんなところに呼び出しちゃって、こちらこそごめんなさいね」

「いえ、そんな。それより、真人君のことで話があるって手紙に書いてありましたけど、どんなことですか?」
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