まほろば【現代編】
「どうやら、お嬢さん起きたみたいだぜ」
いまさら狸寝入りをしても始まらない。
紗綾さんは、青ざめた顔に幾分後ろめたそうな表情を浮かべたまま私のことを一瞬見たが、すぐにその視線を逸らした。
「ここ……どこ?」
声を出してみて初めて気づいたが、妙に空気が喉に絡みつく。
体は相変わらずピクリとも動かなかった。
男は、格子の扉を無造作にあけて中に入ってくると、私の横に膝をついて顔を覗き込んできた。
「ほら、コイツを飲みな」
男は、その服装には似つかわしくない首から提げた可愛らしい布の小袋から赤い小さな粒を取り出した。
そして、それを私の口元へと持ってくる。
「いら、ない」
見ず知らずの人にしかも、そんな怪しげなものを渡されたら拒むのは当然だろう。
だけど、目の前の人物は無表情のまま私の口を無理やりこじ開けるとその赤い粒を押し込んできた。
いまさら狸寝入りをしても始まらない。
紗綾さんは、青ざめた顔に幾分後ろめたそうな表情を浮かべたまま私のことを一瞬見たが、すぐにその視線を逸らした。
「ここ……どこ?」
声を出してみて初めて気づいたが、妙に空気が喉に絡みつく。
体は相変わらずピクリとも動かなかった。
男は、格子の扉を無造作にあけて中に入ってくると、私の横に膝をついて顔を覗き込んできた。
「ほら、コイツを飲みな」
男は、その服装には似つかわしくない首から提げた可愛らしい布の小袋から赤い小さな粒を取り出した。
そして、それを私の口元へと持ってくる。
「いら、ない」
見ず知らずの人にしかも、そんな怪しげなものを渡されたら拒むのは当然だろう。
だけど、目の前の人物は無表情のまま私の口を無理やりこじ開けるとその赤い粒を押し込んできた。