まほろば【現代編】
私たちを連れてきた男は、その場に跪くと来意の口上を述べ始めた。

「スサノオ様。以前より御所望されておりました者どもをお連れしました」

「大儀であった。イリネ、お主は下がってよいぞ」

「はい。では、失礼いたします」

二人の間で交わされるやり取りをただ呆然と見つめるしかなかった。

イリネと呼ばれた私たちを連れてきた男は、その言葉通り闇に紛れるようにいつの間にか姿が見えなくなっていた。

残されたのは、私と紗綾さん。そして、スサノオと呼ばれた妙に威圧感のある男だった。

そのスサノオがふと口元を緩めると、鋭かった視線も幾分和らぎ、ある種の親しみやすさが出てきた。

「お主ら、何でこんなところに連れてこられたかわかっているのか?」

それが元々の性格のなのか、困惑する私たちをさも楽しそうに見ている。
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