まほろば【現代編】

最後の一言は、私に向けられたようだがその失礼な言葉もすぐには頭の中に入ってはこなかった。

そんな私にはお構いなしに、スサノオは話し続けた。

「お主のその男に対する情念はオレにとっては甘い蜜のようなものだ。どうだ？　オレと一緒に根の国で暮らさぬか？」

穏やかとも言える口調で、紗綾さんにとっては非情なことを言う。

案の定、紗綾さんは強い拒絶反応を示した。

「嫌よ！　絶対に嫌！　私は、リュウ君のところに戻るのよ！　リュウ君がいないとダメなのよ！」

紗綾さんの悲痛な叫びが耳にこびりついて離れない。

「あの……」

少し自分を取り戻した私は、やっとそこで声を発することができた。

取り乱している紗綾さんは蹲って泣いている。

その様子を面白そうに見ていたスサノオが、面倒くさそうにこちらに視線を向けた。

「私たちを帰してくれませんか？」