まほろば【現代編】
事情はほとんど飲み込めていないままだったが、こんな状態の紗綾さんをいつまでもここに置いておくわけにはいかない。

下手に出ての発言だったが、返ってきた答えは無情なものだった。

「それは、できんな。これも、契約だ。お前たちには諦めてもらうしかない」

その高慢な態度にむかつきつつ、そこをぐっと堪えて再び問いかける。

「契約? それは、いったいどういうものなんですか?」

「ツチグモの連中との契約だ。ここにヤツラの住処を提供する代わりに、六十年に一度、女子を差し出すというな」

ツチグモというのはよくわからなかったが、ようは生贄みたいなものなんだろう。

それにしても、この目の前の男はいったい何物なのだろうか? 

スサノオという名前らしいが、絶対に普通の人間ではないはずだ。

だけど、そんなことは関係ない。

あまりに勝手な話に頭にきた。

「そんなの私たちに関係ないじゃない! だいたい、あなたはなんなのよ偉そうに!」
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