まほろば【現代編】
「丁重に帰ってもらえ」

「はっ」

その外見に似合わず体育会系の礼をすると、イリネは紗綾さんの腕をとって立ち上がらせた。

紗綾さんは、まだ混乱しているみたいでぼうっとしている。

引きずられるように歩き出した紗綾さんに向けて、スサノオが何でもないことのように声をかけた。

「お主、元の世界に戻るならリュウとやらに伝えろ。ツクヨミを探せとな」

その言葉に過剰に反応したのがイリネだった。

「スサノオ様！何故そのようなことを――」

「黙れ」

その一言で一蹴されてしまったイリネの言葉だが、それだけでとても重要なキーワードだったということはわかった。

でも、今の紗綾さんにはもしかしたらその言葉も届いていないかもしれない。

ずるずる引きずられていく紗綾さんを見て私は思わず駆け寄っていた。
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