まほろば【現代編】
「言葉?」

やっぱり紗綾さんには届いていなかったようだ。

チラリと横を見れば、イリネがイライラした様子を隠しもせずこちらを見ている。

「あまり時間がなさそうなので、これだけは覚えておいてください。リュウにツクヨミを探すように伝えることを」

「え、えぇ。でも、ハルカちゃんは?」

どうやら途中からの記憶がすっぱり抜け落ちているらしい。

今更一から説明しても仕方がないので、それも一言で済ませる。

「私はここに残ります」

「でも、それは……」

「私は大丈夫。お守りがありますから」

そっと胸元の勾玉を握り締めると、紗綾さんの視線もそこに向けられた。

紗綾さんの瞳の中にはまだ揺れる色がある。

だけど、私の決意を読み取ったのか小さくだがしっかりと頷いた。

「わかったわ。確かにリュウ君に伝える」
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