まほろば【現代編】
だから、私たちはその言葉を残してそれぞれの場所へと戻った。

そして今、私はここにいる。

スサノオが用意してくれた部屋なのだが、思ったよりも居心地が良くて自分が囚われの身だということを忘れてしまいそうになる。

だけど、現実に引き戻されるのはこの部屋には出入り口というものが見当たらないことだ。

何かしら特殊な力が働いているようで、入ってくるときもスサノオが聞いたこともないような言葉を発したとたんパカっと口を開けるように扉が開いた。

そのスサノオは、私をこの部屋に押し込めたらそのまま何も言わずに去っていってしまっていた。

なので、相変わらず私はわけもわからずここにいるしかなかった。

「それにしても、スサノオさっきなんて言ってたのかな?」

扉を開けた呪文のようなものを私も唱えることが出来れば、きっとここから出られるんだろうなと思う。

だけど、どう思い返してみても上手く言葉にすることが出来なかった。

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