まほろば【現代編】
「あの、ハルカさんと同じ高校の中臣飛龍と申します。ハルカさんは、ご在宅でしょうか？」

『あら？ちょっと待ってくださいね』

それほど時を置かずして、ガチャリと音を立てると扉が開いた。

中から顔を覗かせたのは、ハルカに良く似た小柄で可愛らしい中年の女性だった。

おそらく、ハルカの母親だろう。

その女性に向けて小さくお辞儀をする。

女性もお辞儀を返しつつ、サンダルを引っ掛けて外に出てくると俺の側までやってきた。

その顔には、にこやかな笑顔が浮かんでいる。

思わず、その顔に安堵の息が漏れる。

もし、ハルカに何かあったのならこんなに落ち着いてなどいられるはずがない。

だが、次の言葉でその思いは打ち砕かれた。

「ごめんなさいね。ハルカ、実は出かけているのよ。それでね、もしかしてあなたってハルカにリュウって呼ばれてないかしら？」

「えっ？えぇ、はい」

「そう、やっぱり。じゃあ、コレ――」
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