まほろば【現代編】
「ほら、着いたぞ」

その声に顔を上げれば、いつのまにやら岩場をくりぬいて作られた、広い湯船が目の前に広がっていた。

どうやら、考え事をしているうちに連れて来られてしまったらしい。

「何してる?入るぞ」

そう言いながら服を脱ごうとしているスサノオを慌てて止める。

「待った、待った、待ーった!」

「何だ?」

訝しげな顔のままどうにか動作を止めてくれた。

「あの、私、一人で入れるから」

「何を、恥ずかしがっているんだ?別に夫婦になるのだから良かろうに」

「ダ、ダメだよ!そこはきっちりけじめをつけなくちゃ!」

とにかくどうにかしてこの場を乗り切るしかない。

「そういうもんかね」

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