まほろば【現代編】
やはり、こちらも動く気配というものがない。

ただし、こちらは前回に来たときも最初はそうだったのでいつどんなタイミングで攻撃を仕掛けてくるのかわからないところが油断できない。

そして、再び目の前の銀髪の青年へ鋭い視線を向けた。

「イリネ、とか言ったな。お前たちは何のためにこんなことしてるんだ?」

イリネは軽く肩を竦めると自嘲気味の笑みを浮かべた。

「オレだってさ、別に好き好んでこんなことしてるわけじゃないさ。だいたい、スサノオのおっさんが余計なことを言うから……」

そこで言葉を止め、無意識なのだろうチラリと視線を紗綾へと向けたように見えた。

気を取り直すように軽く息を吐き出すと、気だるげにこちらに向き直った。

「ま、ここまで来ちまったもんは仕方がない。オレたちの宿願を遂げるためには、お前たちには死んでもらうしか、ないな」

素早い動きで両手を地面につける。

前回同様、強い揺れを感じ思わず膝を突いてしまう。

そして、再びイリネの姿を見失ってしまった。
< 526 / 702 >

この作品をシェア

pagetop