まほろば【現代編】
虚ろな視線がゆっくりと焦点を合わせて俺の前で結ばれる。

「お前たちが悪いんだ。あのクモの糸はツクヨミを制御するためのもの。それを、お前たちが断ち切った。もう、オレの手には負えない」

「制御?」

「ああ。お前が結界の張り直しをしたとき、呪詛をかけたのは実はツクヨミに対してだった。ツクヨミをオレたちの支配下に置くために」

「何のためにそんなことを」

「ツクヨミは、夜の国、延いては妖を統べる神。ツクヨミを手に入れれば、妖全てを手に入れるも同然」

そこでやっと、初めて会った時のような不遜な態度に少し戻った。

「ツクヨミにただ呪詛をかけただけではその強大な力を抑えきることは出来ない。だからこその結界だったんだ。それをお前たちが」

「今はそんなこと言っている場合じゃないだろう!とにかく、この事態の収拾をつける。お前も手を貸せ」

「はっ!んなこと出来るかよ」

「出来る出来ないじゃない。やるんだ」
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